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耐震偽装問題について

日本は地震国であり、地震のリスクの少ない国に比べて民間レベルでも地震対策の為に資金が投じられ、国でもかなりの予算を地震対策に費やしている地震大国です。建物に関してもその影響は如実にあらわれており、国土交通省が厳しい建設基準を設けています。

そうした耐震の為の建築を良く学び、建物の構造を具体化し、図面化するのが建築士の役割ですが、耐震対策にはとにかくお金がかかります。建物の内部で考えてみても壁や窓一つ、また扉、金具一つ、家具一つにしても全てに耐震設備を備え付けるとしたら莫大な資金をかけても間に合いません。またマンションや一戸建てもその骨組みの部分や構造すべてに最新の耐震技術を施したら、それはもちろんその建物の大きな売りや宣伝にはなるでしょうが、それこそコスト面では大変な額になるでしょう。

安全を考慮した構造計画書を偽造することで、根本的にかかるコストを削減し、一級建築士自らと売り主、建設主の利益を追求していたという悪質な犯罪が2005年にあったのは記憶に新しいです。この一連の事件を耐震偽造問題といいます。

構造計画書通りに建設されていたら、耐震設備はしっかりしているはずなのに、国土交通省認定の構造計算書をつくるソフトウエアの計算結果を偽造し、しかも民間、行政の検査機関がその間違いに気付かず、承認してしまったこともこの犯罪を長く続けさせてしまった理由かもしれません。

建築基準法の耐震基準に満たない建物に住んでいることは、この地震国日本においてかなりのリスクを背負うことであり、人命や財産に多大な損害を与える可能性があります。実際、偽造されたマンションなどは震度5強の地震で倒壊の恐れがあると報道され、転出者があとをたちませんでした。

もしこのことが明るみにでないまま、さきの東日本大震災が起こったら、人命にかかわる大被害がでていたかもしれません。普通の詐欺事件では人命にかかわることより財産にかかわることのほうが多いですが、人命の場合は、失われたら取り返しがききません。

そのようなことを考えた場合、この犯罪は、人命の軽視と、そして日本の耐震基準、建築のありかたについて一石を投じる事件になったことは間違いのない事実です。政治家、官僚、そして業者の癒着などの黒い噂が流れる中、こうした事が二度と起こらない様に検査基準の徹底、見直し、そして建築士のモラルの向上などやるべき課題は沢山残されました。

いまでもこの問題は時々話題にのぼります。特に大きな地震がおこり、余震も予測される最近の日本では、この問題は毎日の生活の安全にもかかわってくる大きなものであることを再確認している方も多いのではないでしょうか。